鬼畜勇者

鬼畜勇者の異世界召喚 3話 鬼畜勇者 冒険者ギルドで荒稼ぎをする

「冒険者に絡まれる」

異世界転生での良くあるテンプレである。

野蛮な冒険者に絡まれるも、チートを駆使してあっさり返り討ち。

そしてその戦いぶりからギルドの有力者に目をかけられる。

鬼畜勇者スサノオの場合はどのようなイベントとなるのか!

「てめえ、何しやがる」

ミコトの尻に触れようとした冒険者がスサノオに吠える。

スサノオ「それはオレ様のセリフだ。オレ様の召使いに何しようとした」

スサノオはゆっくりと歩きながら、ミコトと冒険者の間に立った。

「今日入ったばかりのFランクが偉そうに」

受付嬢をナンパしたことも原因だろう

いきなり冒険者は拳を振り上げ、スサノオに殴りかかった。

スサノオは拳を左手で捌き懐に潜り込むと、背負い投げで冒険者を投げ飛ばした。

投げ飛ばされた冒険者が酒場のテーブルに激突する。

背負い投げの途中に手を離すと離れた場所まで投げることができるのだ。

スサノオ「あの程度でオレ様にケンカを売ったのか」

あんな雑魚がでかい顔をできるなんて、このギルドのレベルがよくわかるな。

スサノオは煽るように、大きな声で冒険者に言い放った。

スキンヘッド「てめえ、言わせておけば言ってくれるじゃねえか」

スキンヘッドのガタイの良い大男がスサノオに近寄ってくる。

「ボス!」「この馬鹿野郎!」

スキンヘッドの大男に投げられた冒険者が泣きつき、ゲンコツを落とされた

スキンヘッド「うちの若い奴が迷惑をかけたから見逃してやろうとしたが、新参者のくせに調子に乗ってるじゃねえか」

スサノオ「雑魚に雑魚と言って何が悪い」

自分よりも大柄な男に向かって悪びれもなく言い放つ。

スキンヘッド「上等だ!新人を訓練してやる!!訓練場を借りるぞ!!!」

受付嬢「ちょっと待ってください。ギルド内で私闘は厳禁です」

スサノオ「ちょうど良い、体がなまっていたところだ。相手をしてやる」

せっかく受付嬢が止めようとしていたのに、スサノオはケンカを買っている。

ミコト「スサノオ様、相手が悪いとはいえ、いくらなんでも言い過ぎです」

ミコトから見ればスサノオは自分を守ってくれた。そのせいでベテランからリンチを受けるなど受け入れられるわけがなかった。

するとスサノオはミコトに大量の木片を渡した。そしてミコトが持っていたはずの金貨袋を掲げた。

スサノオ「これからオレ様とこのハゲとの訓練を行うぞ。賭けたい奴はこの召使いに金を渡せ」

そう言ってスサノオは大金の入った金貨袋をミコトに渡した。

シーンと静まるギルド内でジャラという金属音が響いた。

「レートはいくらだ」

スサノオ「オレ様が勝つのは当たり前だから、ハゲに賭けたら2倍だ」

「上限は」

スサノオ「好きなだけ賭けろ」

スキンヘッドはCランクの冒険者であり、既にベテランの域に入っている。

このことは多くの人間が知っており、暴言を吐いたとは言え、スサノオに同情する者も多少はいた。

今日は行ったばかりのFランクの冒険者にスキンヘッドが勝つのは当たり前だからレートも低いと全ての者が予想していた。

それが2倍とかなりの高レートとなっただから、大勢がミコトに金を渡して賭けに参加した。

明日の昼代を賭ける者、今晩の酒代を賭ける者、今日の稼ぎを全て賭ける者、仲間から聞きつけた者、多くの者がミコトに金を渡した。

彼らを見るミコトの目は連れて行かれる牛を見るようだった。

ミコト(これが狙いだったのですね。スサノオ様)

私の心配を返してください。

ミコトは一切の心配もせず訓練場に行くスサノオを見送った。

「ところでFランクの彼が勝ったらいくらかな?」

大勢いた冒険者が全員賭け終わり、ミコトの役目も一段落したところで細身の男性がミコトに声をかけた。

ミコト「・・・すみません。スサノオのレートは決まっていないので」

「そうか彼に賭けることはできないのか」

ミコト「あの、どうしてそんなことを?」

王城での出来事を聞いているミコトだから、スサノオを止めなかったのだ。

それを知らないはずなのにスサノオに賭けようとしたのだから、目の前の人物はよほど変わっていると言える。

「いや、彼があまりにも自信満々だったからね」

目の前の人物は微笑みながらミコトと別れ、訓練場に入っていった。

スキンヘッド「逃げずに来たことだけは褒めてやる」

スサノオ「オレ様を褒めるだと。この世界ではタコはずいぶんと偉くなったもんだ」

タコと揶揄されたスキンヘッドは顔を赤くしながらスサノオをにらみつけた。

スキンヘッド「てめえは怪我をして今日で冒険者引退だ。ただですむと思うなよ!」

訓練場の大剣をスキンヘッドは振り回した。

訓練場の武器は全て刃が削れており、相手に致命傷を与えないように加工してある。

しかし金属バットで骨を折れるように、刃引きされていても人を傷つけるには十分である。

ましてやベテランの冒険者が本気で切りつけているだから、当たり所によっては死んでしまうだろう。

周りで観戦していた人たちもスサノオが五体満足でいられるとは思わなかった。

ミコトとスサノオ本人以外は。

スキンヘッド「ちっ、すばしっこい奴め」

スサノオはスキンヘッドの斬撃を全て紙一重で躱している。

スサノオは一振りの細い剣を持っているが、それすら使わず全て体術で避けている。

スサノオ「どうした、オレ様を引退させるのだろう。感動して涙で前が見えないようにするのだろう」

スキンヘッド「調子に乗りやがって!」

大男の放つ斬撃はより激しくなり、観戦者の方が身震いするほどである。

しかしいくらスキンヘッドが攻撃を激しくてもスサノオにかすることはなかった。

スサノオは斬撃を避けながら辺りを見渡した。

そして賭けの手配をしていたミコトを見つけると、この「訓練」を終わらせることにした。

スキンヘッドが大剣を持ち上げ振り下ろそうとした瞬間、スサノオは懐に潜り込んだ。

そして彼の下っ端と同じように背負い投げ、今度は地面に叩き付けた。

ズドーン

訓練場が揺れるほどの振動が伝わった。

信じられない者を見たと全員が黙っていた。

スサノオ「オレ様の勝ちだ。文句のある奴は出てこい」

「ふざけるなFランクがCランクに勝つなんてあり得ない!」

Fランクのスサノオが勝ったことが信じられず、八百長を疑う者が現れた。

八百長だ!八百長だ!!

スサノオ「良いだろう、第二ラウンドだ。もう一度賭けさせてやる。レートはさっきと同じ、オレが負ければ2倍だ」

さっき勝てたのはマグレだ。2戦目だから疲れているはずだ。

そう自分に言い聞かせながら、先ほどの負けを取り返すため、多くの冒険者が更に賭けにのめり込んだ。

そして彼らは負け続けた。

これまでの損失を取り戻そうと少額だった者も、最後には大金を賭け、そして最後まで負け続けた。

ミコトの手元には冒険者が一生稼ぎ出せないほどの金が集まっていた。

「もうここまでで良いでしょう」

スサノオが勝ち続けて相手が現れなくなった頃、細身の男性が現れた。

スサノオに賭けようとした者好きであった。