今回考察するのはマルベーニです。法王である彼ですが、声優(諏訪部順一)さんの演技も相まって、登場時から胡散臭さがMAXでした。
ゼノブレイド2自体、登場人物の役割がわかりやすくしていることもあり、「絶対、マルベーニはなんか企んでいるだろう」と思っていました。
マルベーニのことをよくあるテンプレ悪役かと思っていましたが、そんな単純な人間ではありません。
500年にも渡って暗躍し騒乱を引き起こしたにもかかわらず、その本当の目的はレックス達を含めて、因縁のあるシンも誤解しているのです。
答えだけを先に書くと
マルベーニの目的は神に会い、神の声を聞くことであり、その方法として世界を混沌に導く・世界を滅ぼそうとしていたのです。
マルベーニも不幸が重なりこのような騒乱を引き起こしてしまったのだと、私は考えています。この後から彼の人生に沿って説明していきます。
先に言っておくと、私の考えは本編のみで構成しています。もちろんイーラ編も触れますが、本編との齟齬がいくつかあるので、その点だけご容赦ください。
マルベーニの信仰の始まり
マルベーニは幼い時に母親を賊に殺されています。その後の顛末はあえて書きませんがマルベーニは生き残りました。これが全てのきっかけになります。
読者の皆さんは、レックスやニア、シンが話していたマルベーニの目的を無視するのかとお怒りになるかもしれません。べつに彼らの推測が全て間違っていたわけではないのです。手段を目的と謝って推測してしまったのです。
実際に10章で創造神クラウスが「あの男、マルベーニ。人は何かを失ったときにその理由を求めようとする」と説明します。創造神クラウスはブレイドを通して、感情や考えも含めて全ての情報を知っています。このクラウスの発言がこれがマルベーニの目的と考えるべきでしょう。
マルベーニの目的をもっとかみ砕いて説明すると「なぜ母親は死んだのか」の理由をマルベーニは求めました。当たり前ですが、賊に殺さえたということはマルベーニもわかっています。
「なぜ母親はしななければならなかったのか」と言う問いの答えを求めているのです。答えの出ない問いであるからこそ神にすがったのでしょう。
神にその答えを聞くために、神に近づくために、マルベーニは神官となります。
神の作った世界に疑問を持つ
成長したマルベーニは勤務に励みます。神の言葉を聞くために非常に良く活動したと思われます。でなければ聖杯大戦の時にメツのドライバーだからとしても、アーケディアの高官である助祭枢機卿になっていないでしょう。
そんな彼ですがあるとき、難民キャンプに行き怪我をした兵士を治療します。そしてその兵士は近隣の民家に強盗を行います。マルベーニがたどりついた時には赤子以外殺されており、自身が治療した兵士を殺しました。
そして神に問いかけます。「これがあなたの望んだ世界なのか」
マルベーニはきっとこのときだけでなく、様々な機会に人の悪い面を見てしまっていたのでしょう。
この頃から深層意識では8章のマルベーニの回想でメツが言っていた「法王庁も信者も誰もが唾棄すべき愚民。人間はこの世界の無駄そのもの。無駄なものは消えてしまえばいい」と思うようになっていたのでしょう。
同時にこれまで法王庁や自分が持っていた神の考えに疑問を持ちます。神は自分たちが考えているような存在とは違うのではないかと。神が望んでいるから、この世界は地獄のようなのではないか。
それを確認するため、マルベーニは神がいると言われている世界樹を登ります。
この時にはまだ神は人々の幸福を望んでいると考えています。 疑問はあるにしてもまだ神は世界を滅びを望んでいるとは思っていません。もしそうならメツが離反した後、アデルに天の聖杯のコアクリスタルを授けようとしないでしょう。
ちなみにイーラ編ではその後が描かれていますが、過激な内容になっています。マルベーニのブレイドであるミノチがやってきて、マルベーニは「実際は(地獄)はこんなもの(現実と同じ)かもしれないな」「望まれているのさーーー人々の救済を」とかなり過激なことをつぶやきます。
ほかにもイーラ編ではマルベーニがかなり過激になっています。ストーリーライターが変わったのか、これが制作陣が意図してやっているのかいまいちわかりません。
世界樹を登頂
マルベーニは単身で世界樹を登頂します。メツやホムラのようにエレベーターを動かさず、外壁を登っています。同じ任天堂系列ということで、ゼルダでがんばりゲージを増やしてきたのでしょうか。
冗談はさておき、マルベーニは神に会えませんでした。もし会えていたなら一連の騒乱は起こらなかったでしょう。マルベーニの望みである神の言葉を聞けるわけですから。
創造神クラウスがマルベーニの納得のいく答えを言うことはできないと思います。しかしそれでもマルベーニが神に失望し、信仰心を捨てるだけで終わったでしょう。これが世界の悲劇につながります
神に会えなかったマルベーニは、なんとコアクリスタルを持ち出します。創造神クラウスがここで止めていたら聖杯大戦は起こらなかったでしょう。
しかし残念ながらマルベーニはコアクリスタルを持ったままアーケディアに帰還してしまうのです。そしてメツと同調するのです。
メツとの同調、そしてメツの離反
マルベーニはメツとの同調に成功します。そして経緯は不明ですがその力をもって敵を一方的に倒します。その光景にマルベーニは圧倒されます。
その後、メツはマルベーニの元から離反します。その際にメツはマルベーニの深層意識を言い当てます。「法王庁も信者も誰もが唾棄すべき愚民。人間はこの世界の無駄そのもの。無駄なものは消えてしまえばいい」
メツもマルベーニも気づいていませんが、マルベーニの深層意識がメツの心に深く影響を与えた結果、メツはマルベーニの深層意識がわかっていたのです。だからマルベーニの深層意識の思いを叶えるため、世界を消し去ろうとします。
一方、マルベーニの視点では神の所有物であったメツが世界を滅ぼそう見えます。そこから神の所有物が世界を滅ぼそうとすることは、神が世界の滅びを望んでいると考えられるわけです。
メツは誰とも同調できたのか、マルベーニだからメツと同調できたのか、その辺りはわかりません。わかることはマルベーニはヒカリとは同調できなかったことだけです。
だんだんとマルベーニは神が世界の滅びを望んでいると思うようになっています。もしここでそれを確信していたら、メツの後押しをしていたでしょう。しかしやはりこれまで熱心に信仰に生きてきたのでしょう。そう簡単に信仰は変わりません
そのためメツを止めるため、もう1つの天の聖杯(プネウマ)のドライバーを探します。
聖杯大戦(イーラ編)
残りの天の聖杯のドライバー探しは簡単にはいきませんでした。ほかのコアクリスタルの同調と同じように失敗もあるからです。
そして王族にも協力を要請してついに見つかりました。天の聖杯であるヒカリと同調できたのはイーラ王国王位継承権4位のアデルでした。そして彼はメツと戦うことになります。
本編の回想ではマルベーニは出てきませんが、イーラ編ではその間のマルベーニの様子が出てきます。
ただ本編と若干かみ合わないところもあります。世界の破滅を神が望んでおり、神の意志である破滅を我々人の手で成すためにイーラに来たと言っているのです。
これでは自分の手で世界を破滅させるためにメツを止める。そのために天の聖杯のドライバーを探していたとなります。
メツはマルベーニが自分の望みである世界の破滅を行わないことにしびれを切らして離反しました。そのためマルベーニが世界を破滅させようとしたら喜んで協力するでしょう。
またマルベーニ自身がメツのドライバーであるので、そこまで人の手(自分の手)にこだわるか疑問であり、それまで排他的なシーンはありませんでした。
さらにこんな物騒なことを慎重なマルベーニがイーラ王家の人間にしかも外で言っているのでかなりの違和感です。
イーラ編のマルベーニいつの間にか、一気に世界の破滅させようと気持ちが傾いていたようです。
話を戻しますが、アデル達の活躍によってメツは討伐されました。しかしヒカリが暴走したことによりイーラは雲海に沈んでしまいます。
私はヒカリの暴走がマルベーニの考えが変わったきっかけだと思います。
ヒカリの暴走と神の意志
ブレイドはドライバーによって容姿や性格が影響されると言われます。きっとマルベーニもそのことは知っていたでしょう。
だからメツが離反して世界を破滅させようとしたときには、自分の深層意識が影響したことも可能性として考えたはずです。だからメツ離反の時点では、神は世界の破滅を望んでいるとは断定していなかったでしょう。
しかしヒカリまで世界を破滅させようとしていたらどうでしょう。ヒカリは人格の優れている英雄アデルが同調したブレイド。そのブレイドでさえ世界を焼いたなら、天の聖杯は世界を破滅させるために存在していると考えてもおかしくはありません。
神が作った天の聖杯は2つとも世界を破滅させようとした。そして神が作った人間も世界を地獄のようにして、世界を破滅させようとしている。
そしてマルベーニはこう確信しました。神の意思は世界を破滅させること。
マルベーニは神に会い、神の言葉を聞くため、世界を破滅に導く行動を開始します。そして500年もの長い期間かけて行います。
500年というといまいちわかりにくいかもしれません。日本でいうと江戸幕府ができたのも400年くらい前です。徳川家康が現代まで生きているようなものと考えると、どれほど異質かわかると思います。
そしてマルベーニは次代の天の聖杯のドライバーであるレックスとその仲間達と戦うことになります。
マルベーニの最後
マルベーニはブレイドイーター・マスターブレイドの力をもって力の強いコアクリスタルを自らのものにして、レックス達の前に立ちはだかり破れます。そして最後の力を振り絞ったシンの攻撃によりトドメを刺されるのです。
人は死ぬ間際にその本性が現れると言います。それはマルベーニも同じであり、その言葉を聞くことでマルベーニの目的がわかるのです。
「終わらんぞ。神に会うまで私は。この手で全てを消し去るまで私は。全てのコアは、神の言葉は私のものだ。」
500年以上生きてきたため、本当に人間に絶望してきたのでしょう。だから神に会う目的には世界を破滅させる力をもらうことも含まれていたかもしれません。
「神よ、私こそあなたが望んだ存在であったはずだ。あなたの望み通り、私は生きた。神よまだ届かぬのですか」
神の望み通り世界を破滅に導いてきた、それでもまだ会えぬのかと叫んで彼の人生は幕を閉じます。
マルベーニとはどんな人物だったのだろう
マルベーニはゼノブレイド2の騒乱の元凶です。彼がいなければシン・ラウラをはじめとした多くの人の不幸は起きなかったでしょう。
ですが彼は根っからの悪人だったでしょうか。逆に元は難民キャンプで活動していた善人の神官でした。むしろ信仰が深い善人過ぎたのでしょう。
善人過ぎたマルベーニに不運が重なった結果、彼は神の意志を誤解し、狂信者となり、一連の騒乱を引き起こしたのでしょう。
もしマルベーニが世界樹に登れなかったら。もし創造神クラウスに会えていたら。もしメツと同調に失敗していたら。もしメツがマルベーニに影響されていなかったら。もしヒカリがイーラを滅ぼさなかったら。
どれか1つでも不運が回避されていたなら、マルベーニはこのような凶行を犯さなかったでしょう。
マルベーニの人柄を表すこととして2つあります。1つめはミノチのこと。もう1つはジークです。
マルベーニはブレイドイーター・マンイーターの技術を秘匿するため、マンイーターを捕獲し続けていました。しかしマンイーターであるミノチは平然とインヴィディアで劇場を開いています。彼は自身のブレイドということもあったのか、見逃されていたのです。
ジークには秘匿技術であるブレイドイーターの手術を施します。サイカが過去の自分と重なっていたとしても、相当思い切ったことをしています。
ブレイドイーターは不死であり永遠に生き続けるため、相当なリスクを背負うわけです。しかもアーケディアで幽閉せずに平気で外に出しています。かなり甘いと言わざる得ないです。
人に絶望し、神の言葉を得るために世界を破滅に導く一方で、昔の仲間の命をとらず、秘匿技術を使って他人を助ける。マルベーニはそんな二面性を持っているようです。